著者: 松坂和夫
出版社: 岩波書店
大学数学を本格的にこれから始める人に「1冊目の本」としてまず薦めたいのが本書です。しっかりとした登山準備なしに登山が危険であるのと同じように、大学数学という山登りにも対応した準備があります。それが「集合と位相」です。本書は集合・位相の数多ある入門書の中でも初学者に最適な一冊。言葉による直感的で丁寧な説明の後に厳密な定義が続くスタイルが、抽象的対象に対する抽象的思考を養ってくれるでしょう。この本が難しいという方は代表著書の大学数学ほんとうに必要なのは「集合」がございますのでぜひ手にとってみてください。
著者: 二階堂副包
出版社: 培風館
本書は主として経済学で使われることの多い線形代数の知識をコンパクトにまとめたテキストです。線形代数のテキストと言うと、行列計算から行列式、二次形式の理論を通ってジョルダン標準形まで というコースがイメージされるかもしれませんが、本書の通底を成すのは Frobeniusの定理と呼ばれる非負行列についての定理です。大学教養課程で線形代数を終えてしまうと、線形代数は単なる道具になってしま うことが多いものですが、上述の Frobeniusの定理や、Stiemke-Tucker の定理、線形不等式系の理論等、大学教養課程を越えたところにこそ線形代数の美しい体系がまっています。難易度としても(経済学のテキストにありがちな)理系を薄めた曖昧な仕様には全くなっておらず、読み応えのある楽しいテキストですので、経済専攻の方はもちろん、線形代数にいまいち「ノレない」理系学生や、線形代数を深めたい全ての方にお薦めします。
著者: 明松真司
出版社: 岩波書店
講師の明松真司による著書です。「線形代数学」にはさまざまな側面がありますが,その中で「抽象代数の入り口」という側面にスポットライトを当てて解説をした本です。「ベクトルの簡単な定義」からはじまって、最後には「商線形空間と次元定理」までたどり着きます。分かりやすく解説をしてあるので、独習にも向いているでしょう。高校数学「ベクトル」を学ぶとき、向きと大きさを持つ量」として定義されますが,実はこの定義はのちに拡張され、ベクトルは「線形空間の元」として扱うことになります。この「定義の拡張」は数学において非常に大切な「公理化」という考え方に他ならず,さまざまな分野で顔を出します。この本では「公理化とはどういうアイデアなのか」ということを,特に丁寧に噛み砕いて説明しています。また「well-defined」,「写像」,「集合の包含関係」など他書では解説を省略されがちな基本的概念についても、なるべく詳細な解説を付けてあります。また、演習問題の解説も「丁寧過ぎるくらいに丁寧に」書くことを心がけました。大学初年度での「線形代数学」でつまづいている方や、数学に興味がある高校生、線形代数学を今一度学び直したい社会人の方々にオススメです。
著者: 吉永良正
出版社: 講談社文庫
グラフ理論の世界的研究者 かつ 数学伝道者 かつ 日本が誇るスーパーレゲェおじいちゃん の秋山仁先生の評伝です。現在も出版や講演等 精力的に活動をされているので、若い方の中には秋山先生を 所謂「天才数学者」のイメージでとらえている方もいるかもしれませんが、秋山先生は「若くして功績を上げてエリート大学でポストを得る」というような典型的数学の天才とは「まったく」違います。受験に全敗し、大学院進学にも失敗し、ようやく辿り着いた大学院ではいじめられ…とにかくどこでも辛酸を舐めながら、それでも、数学と数学教育に全力を注ぎこみ続け成果を挙げる秋山先生 の人生は、数学を学ぶ者としてとても勇気付けられます。数学の勉強をしていると周りが天才だらけに見えて落ち込むことがあるものですが、そんな時こそ本書を手に立ち上がりましょう。
著者: 瀬山士郎
出版社: 日本評論社
シャーロック・ホームズが数学に造詣が深かかったことは、ホームズファンの方なら皆さんご存知だと思いますが、本書はそんなホームズが数学的知識をフル活用して事件を解く(宿敵モリアーティと闘う)本邦発の「数学探偵小説」です。「トポロジー」の解説をさせたら右に出るものはいないと言われる瀬山先生の筆だけあって、小説の筋も面白く かつ 数学的解説も分かり易い というちょっと信じがたいクオリティになっています。主題となる数学は「バナッハータルスキのパラドックス」です。このパラドックスがどのように小説の中で現れるかは読んでからのお楽しみとして、「バナッハータルスキのパラドックス」の直感的な説明を求める読者 と 全ての数学小説ファンにお薦めします。
著者: 野崎亮太
出版社: 日本実業出版
何年か前の話ですが…理系卒の社会人を対象として「大学時代にもっとしっかりと学んでおけば良かったと思う数学の分野は?」というアンケートをとったところ、1位 微分方程式、2位 統計学 となったそうです。事程左様に微分方程式は実社会においても求められている数学の分野なわけですが、数学から何年も離れた大人があらためて学び直しをするのに適したテキストはそう多くはありません。「存在と一意性の定理」のボリュームが多すぎたり、学部微積分と線形代数が前提とされていたり、事例が偏っていたり…。本書はこれまでになかった「大人が学び直すための微分方程式」のテキストです。事例が豊富であり、必要な数学も高校数学の範囲からしっかり解説されています。微分方程式を初めて学ぶ方、微分方程式再チャレンジの社会人の方に、本書を進めます。
著者: 陰山英男
出版社: 小学館
「バカとブスこそ東大へ行け」の『ドラゴン桜』でも絶賛されていた「百ます計算」のテキストです。
四則計算程度の単純計算を百問(百ます)ごとひたすらに解いていきます。百ます計算による反復練習の効果は各種メディアでも伝えらえている通りですが、四則計算なんて簡単、という方にもあえてお薦めしたくてここに掲載しました。計算が「速く」「正確に」できることは、数式を追う時の負荷を大きく減らし、結果、式の持つ本質の理解により集中できるようになります。高校数学や大学数学のテキストで躓くことが多かったり、業務分析に時間がかかり過ぎていたりするのなら、計算に余計なエネルギーを奪われているのかもしれません。遠回りに見えるかもしれませんが、少しでも思い当たる所がある方は是非書店でのぞいて見て下さい。