書籍紹介

人狼知能で学ぶAIプログラミング ~欺瞞・推理・会話で不完全情報ゲームを戦う人工知能の作り方~

00

著者 : 狩野芳伸、大槻恭士、園田亜斗夢、中田洋平、箕輪峻、鳥海不二夫
出版社 : マイナビ出版

「人狼ゲーム」は不完全情報ゲームの1つであり、将棋・囲碁の次に人工知能が取り組むゲームをいわれている。本書は、人狼ゲームを勝ち抜くための人工知能(人狼知能)を開発するための書籍であり、そのためのエッセンス(機械学習や自然言語処理など)が詰まっている。当然、本書を読み進めるためには、プログラミングの知識も必要になる。プログラミングの経験があれば、本書をもとに人狼知能開発に取り掛かれる。驚いたことに、大会連覇中の人狼知能アルゴリズム解説もあるので、最初から強い人狼知能を作ることも可能である。一方で、プログラム初心者には本書は難しく、本書を読むよりも先に、Javaなどの解説書が必要だろう

人工知能の作り方 「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

00

著者 : 三宅陽一郎
出版社 : 技術評論社

著者はスクウェア・エニックスでゲームAIを開発している。その豊富な経験を踏まえ、AIという広い分野の様々な側面をまとめている。本書では、特にゲームにおいて動いているキャラクターを自然に見せるために、人間の挙動と比較しながら、どのような点を工夫しているのか理解しやすいように解説されている。但し、個々の解説は、「開発実務で役立つ」というような詳細なものでは無い。ゲームでスムーズに働くAI開発のためには、専門書が必要になるだろう。本書は、ゲームAIをはじめとした「知能」がどのようなものか?、という問いかけに対する答えを模索することに注力されている。そのため、ゲームAIに興味のある読者が、人工知能全般を幅広く知る為に時に有用である。

Rによるテキストマイニング入門

00

著者 : 石田基広
出版社 : 森北出版

本書では、テキストマイニングについて基本的な手法からウェブスクレイピング・トピックモデルなどの応用的な最新の手法までの広い範囲を解説している。第2版ではデータ取得方法についても記載があり、Twitterや青空文庫といったネット上のテキストデータを取得して解析する方法も知ることが出来る。類書よりも初心者が取り組むことを指向しているので、RStudioで操作しながら、読み進めることで研究や実務に導入することが可能となろう。さらに、著者が本書のサポートサイトを用意している。応用的な手法や数学的な裏付けについて勉強するには物足りないかもしれないが、テキストマイニングの勉強を始めるための書籍としては最良の1冊と言える。

できる!傾向スコア分析SPSS・Stata・Rを用いた必勝マニュアル

00

著者 : 康永秀生、笹渕裕介、道端伸明、山名 隼人
出版社 : 金原出版

著者らは臨床疫学の専門家であり、本書は普段は統計解析を行っていない臨床医に向けた書籍である。臨床医への普及率という観点からSPSS、Stata、Rという3種類の統計解析ソフトを用いた解説が収録されている。解析環境があれば、サポートサイトから架空患者のサンプルデータをダウンロードできるので、本書の解析で試すことが可能である。一方で、傾向スコアについて理論背景の説明は手薄い。例えば、類書ではよく解説されている反事実や潜在アウトカムの解説はほとんど無い(「タイムマシン試験」という本書独特の名称で1ページ弱を使って解説されているのみである)。そのため、傾向スコアについて深く知りたいという読者には向いていない。

医学的研究のための多変量解析

00

著者 : Mitchell H. Katz(著)、木原雅子(訳)、木原正博 (訳)
出版社 : メディカル・サイエンス・インターナショナル

本書の想定読者は医療従事者であるので、数式による解説はできる限り廃されている。そのため、数学を苦手としていても読み進めることが可能であろう。医学系の研究において多変量解析を行うときに、出会う統計的な問題・課題について網羅的に解説されている。網羅的なだけではなく、細かい点へも丁寧に解説されているので、初級者にとって役に立つことはもちろん、上級者が「アレってどうだったっけ…?」と疑問を持ったときにもサッと調べられる内容となっている。各節の見出しが疑問文つけられているので、困ったときに解決策をさがしやすい。ただし、具体的な統計ソフトの操作方法などの説明はないので、実際の研究・実務に役立てるには、統計ソフトの解説本も必要になる。

データ分析の力 因果関係に迫る思考法

00

著者 : 伊藤公一朗
出版社 : 光文社新書

シカゴ大学校公共政策大学院で教鞭をとる伊藤先生による著書。前半部分でパワフルな解析手法についての概念と具体例の説明がなされている。文章は読みやすいので、統計学初心者(解析を行ったことがない人)であっても、「関連をみるだけでは意味が無く、因果関係に迫るためにどうすれば良いか」を理解できる。そして、後半で実践応用事例の紹介やバイアスや外部妥当性などデータの限界についても記載がある。新書でありながら、因果関係に迫るための手法の全体像を知ることができ、類書に比べてコストパフォーマンスが高い。ただし、あくまで入門書であるので、実際の研究や実務に役立てるためには、本書を踏み台にして専門書にあたる必要がある。

データ解析のための統計モデリング入門

00

著者 : 久保拓弥
出版社 : 岩波書店

本書では、「検定して『ゆーい差』をだせばいいんだ」といった立場に非常に批判的な立場で論を進めている。カバーする範囲は広く、ポアソン分布から階層ベイズモデルまでである。そのため、ある特定のレベルの読者を想定した類書とは異なり、説明内容は中級レベルから上級レベルまで多岐に亘っている。数式は多く出てくるものの、著者の丁寧な説明もあるため、数学が苦手であっても(努力すれば)読み進めることが可能なレベルであった。一方で、説明不足で「決めつけ」による批判とも見えるような箇所がある(例えば、割り算モデルに対する批判があるが、その理由については記述が少ない)。

ダメな統計学:悲惨なほど完全なる手引書

00

著者 : アレックス・ラインハート(著)、西原史暁(訳)
出版社 : 勁草書房

本書を読むと、著者が指摘するような「ダメな統計学」がどんなに沢山、世の中に広く出回っているのかを知らされる。しかし、「ダメな統計学」について丁寧な説明と具体例を挙げながら糾弾しつつも、「ダメな統計学」が広まっていることを絶望している訳ではない。どうすれば「ダメな統計学」を駆逐できるのかについての処方箋を本書の第12章に収録している。その中でも「あなたがすべきこと」と題された3ページ弱に簡単なステップがまとめられている。もちろん、統計学徒が必ず心にとめている次の言葉も含まれている。「繰り返し練習しよう」。

実践的メタ分析入門

00

著者 : 岡田涼、小野寺孝義
出版社 : ナカニシヤ出版

著者らは、いずれも心理学・教育学の専門家である。これらの学問分野では、「1つの研究結果だけでこんなことをいっていいのか?」という疑問が生じ易く、研究の再現性に注意を払わなければならない。本書では、このような疑問や課題に答えるための手法としてメタ分析を解説している。カバーしている範囲は広く、文献検索の方法から始まり構造方程式モデリングやベイズ統計を用いるアプローチ、ネットワークメタ分析といった応用的な手法までを解説している。統計解析ソフトStataでの実例もあるが、有償ソフトであるため、誰しもすぐにメタ分析を始められるわけではない。しかし、Stataユーザにとっては、唯一日本語でメタ分析の手法を解析した書籍となる。

なぜベイズを使わないのか!?

00

著者 : 手良向聡
出版社 : 金芳堂

著者の手良向先生は京都府立大学の生物統計学教授である。本書の第1部では、臨床研究において、従来の頻度流統計学の利点と限界点を説明している。第2部では、この限界点を打破するための手段として、ベイズ統計学を紹介している。類書に比べて実際の臨床研究を例とした解説が多く、少ないサンプルサイズの臨床研究であってもベイズ統計学が威力を発揮することが理解できる。しかし、ベイズ統計学を理解する上で重要なベイズの定理や事前分布・事後分布の説明は少なく、ベイズ統計学の初学者が読破するには難しいと感じるだろう。本書は、ある程度のベイズ統計学の知識がある中級者以上が、臨床研究に役立てようとする時に一読の価値がある。

No More Posts