著者: 二階堂副包
出版社: 培風館
本書は主として経済学で使われることの多い線形代数の知識をコンパクトにまとめたテキストです。線形代数のテキストと言うと、行列計算から行列式、二次形式の理論を通ってジョルダン標準形まで というコースがイメージされるかもしれませんが、本書の通底を成すのは Frobeniusの定理と呼ばれる非負行列についての定理です。大学教養課程で線形代数を終えてしまうと、線形代数は単なる道具になってしま うことが多いものですが、上述の Frobeniusの定理や、Stiemke-Tucker の定理、線形不等式系の理論等、大学教養課程を越えたところにこそ線形代数の美しい体系がまっています。難易度としても(経済学のテキストにありがちな)理系を薄めた曖昧な仕様には全くなっておらず、読み応えのある楽しいテキストですので、経済専攻の方はもちろん、線形代数にいまいち「ノレない」理系学生や、線形代数を深めたい全ての方にお薦めします。