統計学

医学的研究のための多変量解析

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著者 : Mitchell H. Katz(著)、木原雅子(訳)、木原正博 (訳)
出版社 : メディカル・サイエンス・インターナショナル

本書の想定読者は医療従事者であるので、数式による解説はできる限り廃されている。そのため、数学を苦手としていても読み進めることが可能であろう。医学系の研究において多変量解析を行うときに、出会う統計的な問題・課題について網羅的に解説されている。網羅的なだけではなく、細かい点へも丁寧に解説されているので、初級者にとって役に立つことはもちろん、上級者が「アレってどうだったっけ…?」と疑問を持ったときにもサッと調べられる内容となっている。各節の見出しが疑問文つけられているので、困ったときに解決策をさがしやすい。ただし、具体的な統計ソフトの操作方法などの説明はないので、実際の研究・実務に役立てるには、統計ソフトの解説本も必要になる。

データ分析の力 因果関係に迫る思考法

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著者 : 伊藤公一朗
出版社 : 光文社新書

シカゴ大学校公共政策大学院で教鞭をとる伊藤先生による著書。前半部分でパワフルな解析手法についての概念と具体例の説明がなされている。文章は読みやすいので、統計学初心者(解析を行ったことがない人)であっても、「関連をみるだけでは意味が無く、因果関係に迫るためにどうすれば良いか」を理解できる。そして、後半で実践応用事例の紹介やバイアスや外部妥当性などデータの限界についても記載がある。新書でありながら、因果関係に迫るための手法の全体像を知ることができ、類書に比べてコストパフォーマンスが高い。ただし、あくまで入門書であるので、実際の研究や実務に役立てるためには、本書を踏み台にして専門書にあたる必要がある。

データ解析のための統計モデリング入門

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著者 : 久保拓弥
出版社 : 岩波書店

本書では、「検定して『ゆーい差』をだせばいいんだ」といった立場に非常に批判的な立場で論を進めている。カバーする範囲は広く、ポアソン分布から階層ベイズモデルまでである。そのため、ある特定のレベルの読者を想定した類書とは異なり、説明内容は中級レベルから上級レベルまで多岐に亘っている。数式は多く出てくるものの、著者の丁寧な説明もあるため、数学が苦手であっても(努力すれば)読み進めることが可能なレベルであった。一方で、説明不足で「決めつけ」による批判とも見えるような箇所がある(例えば、割り算モデルに対する批判があるが、その理由については記述が少ない)。

ダメな統計学:悲惨なほど完全なる手引書

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著者 : アレックス・ラインハート(著)、西原史暁(訳)
出版社 : 勁草書房

本書を読むと、著者が指摘するような「ダメな統計学」がどんなに沢山、世の中に広く出回っているのかを知らされる。しかし、「ダメな統計学」について丁寧な説明と具体例を挙げながら糾弾しつつも、「ダメな統計学」が広まっていることを絶望している訳ではない。どうすれば「ダメな統計学」を駆逐できるのかについての処方箋を本書の第12章に収録している。その中でも「あなたがすべきこと」と題された3ページ弱に簡単なステップがまとめられている。もちろん、統計学徒が必ず心にとめている次の言葉も含まれている。「繰り返し練習しよう」。

実践的メタ分析入門

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著者 : 岡田涼、小野寺孝義
出版社 : ナカニシヤ出版

著者らは、いずれも心理学・教育学の専門家である。これらの学問分野では、「1つの研究結果だけでこんなことをいっていいのか?」という疑問が生じ易く、研究の再現性に注意を払わなければならない。本書では、このような疑問や課題に答えるための手法としてメタ分析を解説している。カバーしている範囲は広く、文献検索の方法から始まり構造方程式モデリングやベイズ統計を用いるアプローチ、ネットワークメタ分析といった応用的な手法までを解説している。統計解析ソフトStataでの実例もあるが、有償ソフトであるため、誰しもすぐにメタ分析を始められるわけではない。しかし、Stataユーザにとっては、唯一日本語でメタ分析の手法を解析した書籍となる。

なぜベイズを使わないのか!?

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著者 : 手良向聡
出版社 : 金芳堂

著者の手良向先生は京都府立大学の生物統計学教授である。本書の第1部では、臨床研究において、従来の頻度流統計学の利点と限界点を説明している。第2部では、この限界点を打破するための手段として、ベイズ統計学を紹介している。類書に比べて実際の臨床研究を例とした解説が多く、少ないサンプルサイズの臨床研究であってもベイズ統計学が威力を発揮することが理解できる。しかし、ベイズ統計学を理解する上で重要なベイズの定理や事前分布・事後分布の説明は少なく、ベイズ統計学の初学者が読破するには難しいと感じるだろう。本書は、ある程度のベイズ統計学の知識がある中級者以上が、臨床研究に役立てようとする時に一読の価値がある。

みんなのR -データ分析と統計解析の新しい教科書

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著者 : Jared P. Lander
出版社 : マイナビ

現場のデータサイエンティストによって書かれた実践的な R 入門書です。統計解析手法の数学的なロジックについてはほとんど説明されておらず、翻訳も所々誤っているもしくは統計学的に標準的な訳語が使われていないと言う難点がありますが、にも関わらずここで紹介するのは、本書が「データ整形」や「データ結合」等の前処理について非常に重きを置いているからです。多くの「R 本」が分析パッケージ の利用方法やヴィジュアル化を急ぐのに対して、「前処理」と「分析」がバランス良く扱われており、分析へ入る「その前」で躓いている方には一読の価値アリだと思います。

深層学習

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著者 : 岡谷貴之
出版社 : 講談社

深層学習(ディープラーニング)はニューラル・ネットワークを利用した機械学習の手法であり、画像認識や画像カテゴリー認識 及び 音声解析等 各種人工知能テクノロジーに応用されている” 今アツイ ”最先端の分野です。本書は深層学習についての、理系教養程度の知識にある方にとって現状最も分かり易い入門テキストの1つだと思います。数理的解説と実務応用や歴史についての記載とのバランスが良く、かつ 図も豊富なためこの分野の基礎理論と現状を手っ取り早く概観したいという要望に応えてくれます。折しも本文を記載している2016年、GoogleのAlphaGoが李世ドル9段を破ったことが話題になりました。また IBMのWatsonも日々メディアを賑やかしています。Alpha GoやWatsonを含む人口知能のロジックを知りたいという方、是非本書を手に取ってみて下さい。

因子分析

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著者 : 市川雅教
出版社 : 朝倉書店

数ある多変量解析の内、ユーザーにとって最も”モヤモヤする”分析の1つは因子分析ではないでしょうか。分析の用途や出力結果は魅力的なのに、裏側のロジックを知ろうとテキストを手に取ると 記述が曖昧であったり、内容が断片的であったり、あるいは数学的に難し過ぎたりして、長年使ってはいるがロジックはブラックボックスのまま、という人は多いと思います。本書はそんな多くの方の”モヤモヤ”を解決する素晴らしいテキストです。因子分析のロジックと最近の研究結果が 数学的にきちんと かつ 行間を飛ばさず に記載されています。因子分析ユーザーの方も、因子分析を諦めてしまった方も、是非一度手に取ってみてください。ただし、学部程度の線形代数までは仮定されていますので、線形代数が曖昧な方は線形代数のテキストを脇に置いて読み進めると良いと思います。

ロスマンの疫学

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著者 : KennethRothman
出版社 : 篠原出版新社

本書は「疫学」の世界的に有名なテキストであり、著者のKennethRothmanは同分野の大家です。数学系だと馴染みのない方も多いかもしれませんが、疫学は公衆衛生科学の中核となる分野であり感染症の制御や住生活環境の改善に貢献している学問分野で(ナイチンゲールをイメージしてください)生存時間解析やロジスティック回帰等統計学の様々な分析手法を活用しています。ですので、本書でも医療統計学の解説は充実していますが、白眉はやはり医療統計学の枠に収まらない疫学独自の概念や「疫学的思考法」の解説です。分析手法のロジックを理解することばかりにエネルギーを投入しがちな人には、「科学的思考の上で研究を”デザイン”すること」の重要性に気付かせてくれる1冊となるでしょう。

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